『今敏監督の遺作と言えるアニメ映画【パプリカ】を観て、夢と現実について考えてみる』

皆さんは夢と現実の区別が明確に付きますか?
中国の思想家、荘子(荘周)の説話で【胡蝶の夢】というのをご存知だろうか?
夢の中で蝶としてひらひらと飛んでいた所目が覚めたが、はたして自分は蝶になった夢をみていたのか、それとも今の自分は蝶が見ている夢なのか、という説話である。

どちらが夢で、どちらが現実なのかは誰にもわからないし、どちらの自分も真実であり、どちらも受け入れれば良い。
正に『パプリカ』という映画の世界観です。

=あらすじ=

天才研究者の時田浩作によって開発された夢を共有する装置、DCミニ。
千葉敦子は精神医療総合研究所の職員として働きながら、DCミニを使用して夢を共有し、夢の中でのみ現れる人格【パプリカ】を使ってサイコセラピーを行うサイコセラピスト。
警察官の粉川利美も島(研究所所長)の紹介でDCミニを使った「パプリカ」によるサイコセラピーを受けはじめる。

そんなある日、そのDCミニが研究所から盗まれる事件が発生する。
他人の夢に潜り込むことが出来るDCミニによって夢という深層心理の領域に他人が踏み込んでしまうことの危険性を危惧し、開発を凍結させようとする車椅子の理事長・乾精次郎と口論となる島と千葉であったが口論の最中にDCミニの悪用によって島が発狂、突如走り出し研究所から飛び降りて大怪我、昏睡状態に。
この事態を受けて千葉と時田、研究所職員の小山内守雄らはDCミニを取り戻すために動き出すー。

原作は大好きな作家・筒井康隆による同名のSF小説。

=「私の夢が、犯されている―/夢が犯されていく―」=

本作は夢と現実が混在する世界。
やがて観ている方もどこからが夢でどこからが現実なのかわからなくなってきます。
夢に侵食された人たちの支離滅裂な言動や、あちこちに現れる人形たちが不気味さとストーリーを難解にして更に混乱してしまいます。

しかし色鮮やかな場面場面と、平沢進さんの美しい音楽が非常に素晴らしい作品でした。

後半、現実世界がどんどん夢に侵食されていき、ますます混沌としてクライマックスへ。

最後まで観終わって、なんだか爽やかな気持ちになりました。
まるで実写の邦画の青春映画のような(笑)

夢の中の自分を受け入れること、言い換えれば【虚構を上手く生きること】が現実世界を上手く生きることだと感じました。

しかし現在、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)が盛んな世の中で、現実と虚構の区別が本当にできるだろうか?
2018年のニュースで見たVR空間でのギロチン体験。
『意識は遠のき、首に違和感、手足のしびれ、しばらく動くこともできなかった』
もう既に虚構が現実を飲み込み始めているのかも知れない…。
本作【パプリカ】は今も色褪せず、そう思わずにいられない作品でした。